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ニュースレター(機関紙)

歯列矯正:日米比較体験談
NL04120103
歯科、矯正

歯列矯正:日米比較体験談
ノーラ・コーリ
海外出産・育児コンサルタント

歯列矯正に関しては、アメリカの方が進んでいて、期間も短く、矯正技術も進んでいて、費用の面でも日本よりは安いと評判を聞いていました。上の子どもの歯列矯正を日本で行い、5年(1996~2001)という歳月を費やし、さらに100万円近く費やし、日本での様子は把握していたので、果たしてアメリカではどのような歯列矯正が行われているのか、興味を持っていました。下の子どもも矯正が必要と診断されていたため、渡米後すぐ娘の歯列矯正を始めました。その後2年半(2001~2004)かけてやっとこのたび矯正装置がはずされ、リテ-ナー(保定装置)の装着になり、このたび歯列矯正日米比較体験談をここで述べるに至りました。

アメリカの歯並びに対する考え

アメリカと日本との一番大きな違いはおそらく国民の歯並びに対する意識ではないでしょうか。日本ではきれいな歯並びの大切さをそれほど強調しないように思えます。治療の必要性は、歯並びが悪いとうまく歯を磨くことができないので虫歯になりやすい、うまくかめないと消化に影響するなどの強調で親を説得しているような印象を受けました。つまり日本では美しい歯並びのみを強調しても矯正治療をするのには説得力に欠けるのでしょう。それを一番象徴しているのが、歯列矯正には医療保険が降りないことだと思います。日本では矯正歯科医は自由診療となっていて、各クリニックで矯正治療費を自由に設定でき、歯列矯正は美容整形と同じように捉えられています。そのため、そこまでお金を出してまで歯並びにこだわらなくてもよいと考えている親はまだいると思います。その表れとして、大人でもひどく歯が前に出ている人、八重歯がひどく目立つ人、歯並びががたがたな人が多くいます。

それに対して、アメリカ人にはそのように目立つ人はほとんどいないといっても過言ではないでしょう。たまに見かける歯並びの悪い人は貧しくて矯正するお金すらなかったような人で、貧しい人を風刺画などでえがくときは悪い歯並びを強調するくらいですので、悪い歯並びは貧しさを象徴してしまうのです。そのようなことからもアメリカではそれだけ昔からきれいな歯並びに重点がおかれ、ほとんどの親は必要性を問うこともなく、また歯科医の勧めを待つまでもなく、矯正治療に積極的です。矯正をすることは、からだの疾患を治すのと同じくらい重要で、矯正をさせない親は、親としての責任を果たしていないとまで受け止められてしまいます。つまり子どもの歯列矯正を行うのは親の責任というほどです。

それではなぜこの国ではこれほどまでにも歯列矯正にこだわるのでしょうか。日本で前面に出している歯槽膿漏、虫歯、正しい発音ができない、咀嚼障害などの病気を予防する目的だけでなく、アメリカではきれいなスマイルが生きるうえ大切で、そのきれいなスマイルがその人の自信につながると強調しています。さらにアメリカの文化は笑みからコミュニケーションが始まりです。多人種、多言語のこの国では笑みは相手に、私は危険な人物ではありません、と安心感を与えるものです。日本では女性は口を細めて、手を当てて笑うことが美とされ、男はニヤニヤ笑うのでなく、毅然とした態度が求められます。

またアメリカではあいさつをするときにほほにキスをします。そしてロマンスを大切にするため、恋人、夫婦間のキスは日常的に行われています。しかし、日本の習慣にキスのあいさつや抱擁はありません。日本でキスはまだまだ性的な意味合いのほうが強いと思います。ましてや公の場でのキスはふしだらとみなされます。そしてキスが日常生活に浸透しているアメリカでは口臭に特に気をつけています。この口臭を大きく作用するのが歯並びとなると、親はその重要性を十分理解しています。スーパーマーケットの棚にはマウスウォッシュという除菌、口臭予防のうがい薬が何種類も並べられ、歯科衛生士は糸ようじでのクリーニングは毎日するように強調します。このようなことからアメリカではいかにきれいな歯並びが重要であるかが理解できると思います。

食生活も多少関係していると思いました。日本人の食生活は魚介類、新鮮野菜をより自然な形で摂取するように咀嚼を要求される硬いものが意外と多いように思えます。そのようなことからあごが鍛えられ、比較的歯並びがきれいで、歯列矯正をあえて必要としない人が多いのではないでしょうか。それに対してアメリカ人の食事はハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、シチューなど比較的やわらかいものが目立ちます。

そして最後に一番重要な矯正治療にかかる費用を無視できません。確かにアメリカは日本と比べると歯列矯正にかかる費用はかなり抑えられます。決して安いとはいえませんが、アメリカでは歯列矯正も医療保険でカバーされることがあるから、そのような視点からも気軽に歯列矯正に踏み切れるのだと思います。それに対して、日本では歯列矯正は保険がききません。

矯正歯科医探し

日本では私がかかっていた歯科医に矯正歯科医を紹介してもらいました。そこは○○矯正歯科研究所の看板をかかげるほど、多くの矯正歯科医を養成するクリニックでもありました。上の子は紹介された院長先生に毎回診てもらうのではなく、院長先生の指導のもとで経験の浅い女性の矯正歯科医が担当医として治療を進めました。

アメリカでは一般的に小児歯科医が矯正歯科医を紹介してくれます。その矯正歯科医に電話で連絡し、予約をとって、紹介状を持って出向きます。この点は日本も同じだと思います。もちろん評判を聞いて、友人からの紹介で矯正歯科医を決める家族も多くいます。しかし、私の場合は、小児歯科医が決まる前に歯列矯正を始めたかったことと渡米直後で矯正経験を持つ日本人が周りにいなかったため、子育て中の親が購読するコミュニティー新聞の宣伝を見て、まずいくつかの矯正歯科医に問い合わせました。その中でも、無料相談というキャッチフレーズにひかれて、ドクターPのところへ予約を入れました。

ドクターPは韓国人で、アメリカでトレーニングを受けた女性の矯正歯科医でした。私はアジア人として親しみを感じ、娘もそのドクターを気に入ったので、ドクターPにすぐ決定しました。ニューヨーク在住の邦人の多くは日本語が理解できる矯正歯科医を選んでいますが、日本語が理解できるということで割高です。しかも矯正の場合は生死にかかわることはないので、ことばのリミットを感じていても長い付き合いの中で信頼感は育つので、納得のいく治療を受けられると思います。

毎月の定期健診

日本のドクターは実に丁寧で、時間をかけて調整してくれました。歯のクリーニングは毎回歯科衛生士によって行われました。定期的に写真を撮り、レントゲンを撮りました。親までいっしょに全身像を撮られたのには驚きました。また院長先生に診てもらっていたため、待ち時間も含めて最低1時間はかかりました。

それに対してアメリカではものの15分で終わりました。基本的には上か下かのどちらかのワイヤーを取り除いて、それを曲げ、さらに付け直して新しい輪ゴムをつけるという作業でした。しかも輪ゴムのつけはずしはアシスタントの役目でした。アメリカでも写真を撮ったり、レントゲンを撮りましたが、写真は最初と最後の2回のみで、レントゲンは最初と中間期に一度と日本ほど頻繁には行われませんでした。ましてやクリーニングはいっさいありませんでした。クリーニングと虫歯のチェックは小児歯科医に行って行うようにと言い渡されました。つまりはっきりと専門が分かれていました。そして、小児歯科医との半年ごとの検診は必須でした。


 装置をつけたその日 (治療前)

矯正期間と治療法の違い

上の子は5年生から中学3年までの5年間かかりました。これは本人の歯が永久歯に生え変わるのに時間を要したからでした。それに対して下の子はもうすでにほぼ永久歯が生えそろっていたため、最初は2年だろうと言い渡されていましたが、結果的には永久歯が全部生えそろうのに時間を要したため、半年伸びました。また上の子は下あごが多少出ていたため、ヘッドギアの使用もあったため、時間がかかったともいえます。いずれにしろ期間についてはケースバイケースなので比較はむずかしいと思いました。

治療法の違いに大きな違いはありませんでしたが、強いて言えば、リテーナーの装着時間でした。日本では半年間は食事や歯磨きをしない間は1日中つけているように言われ、その後1年間は夜のみと言われましたが、アメリカでは夜のみ、一生つけるように言われました。一生と聞いたときには驚きました。しかしこれもリテーナーの種類が違うので本当の意味での比較はむずかしいと思いました。

不快な症状への対処の仕方

一番大きな違いはおそらく不快な症状への対応の仕方だと感じました。ワイヤーを変えたり、調整した後はとかく痛みを伴いました。日本では痛みに対しては単に仕方がないので我慢するように言い渡されましたが、アメリカでは痛み止めを飲むように言い渡されました。また装置の一部である大臼歯バンドのかぎやワイヤーのでっぱりがほおの内側を傷めることもありました。その時アメリカではワックスをバンドの上にかぶすように言われました。つまり予防策でした。それに対して日本では傷がつくのは避けられないので、症状に対しての治療で、装置の傷によってできた口内炎を WAPLON-P というパッチ式の薬で治療するように言い渡されました。

子どもたちへの配慮

漫画のキャラクターをモチーフにしたフロス、ペパーミントなどさまざまな味が付いていたフロス、さまざまなフルーツ味をそろえた液体フロス(日本でも輸入販売されています)、さまざまな色をそろえた輪ゴムなどはアメリカの方がチャイルド・フレンドリーであったように見受けられました。子どもたちが多い診療所であったため、待合室にはテレビゲームが置かれていました。しかし、輪ゴムの色に関しては、日本でも上の子は毎回変わる色を楽しんで選んでいました。下の子はハロウィーンの季節にはオレンジと黒、クリスマスは緑と赤、夏はブルーでのコーディネートと1年を通して毎月2~3色をベースに変えて楽しんでいました。一番驚いたのはリテーナー(保定装置)でした。上の子はクリアーな目立たないプラスチックのリテーナーだったのですが、下の子は、プレートタイプで、歯の表側に沿わしたワイヤーと裏側の樹脂で歯を押さえ後戻りを防ぐものをつけています。この樹脂の部分が透明はもちろん、さまざまな色が選べ、さらにその樹脂に銀ラメがほどこされているものもあり、名前まで入っているのです。また歯をかたどった模型をアメリカでは子どもに渡しましたが、日本ではクリニックに保管されました。

歯の清潔を保つために

装置がつけられている間はとにかく虫歯にならないように気を使いました。あのワイヤーの間にフロスを入れるのは一苦労でした。日本では液体状のフッ素を歯磨き後に歯ブラシで歯全体を塗るように言い渡されました。それに対してアメリカではフッ素入りマウスウォッシュの原液を水で薄めて歯の間をリンスするように言い渡されました。フッ素の効果があったからでしょうか、上の子は装置を付けていた5年間、下の子は2年間まったく虫歯になりませんでした。

矯正費用の違い

日本で治療を受けた上の子の場合はメタルブラケットの装置を使い、見積もりは60万円で、それプラス毎月5000円の診察料がかかり、さらに消費税まで加算されたので、それを含めると5年間で合計約945,000円かかりました。支払い方法は2回の分割払いで銀行振り込みでしたが、毎月の診察代は最初の頃は現金でしたが、やがてクレジット・カードを受け付けるようになり、支払い方法が楽になりました。

下の子の場合もメタルブラケットを使用して、合計4700ドル (約56万円)と伝えられ、それを患者側で自由に設定できる分割払いで毎月100ドルずつを2年半に渡って毎月の定期検診のたびに払い、装置をはずす前に残額すべてを支払いました。ただし、以前家族で入っていた医療保険が矯正治療も一部カバーする保険であったため、その保険に入っている間は保険金が合計700ドル下りました。しかし、保険を変えた時に、その新しい保険では矯正はおろか、歯科治療もカバーされていなかったため、残額はすべて自己負担となりました。支払い方法はクレジット・カード、小切手、現金の選択がありました。アメリカでは銀行振り込みは一般的ではありません。そして、この4700ドルには毎月の診察費が含まれていて、日本のように毎月の定期健診で5000円プラス消費税を払うことはありませんでした。また装置をはずしたあとつけるリテーナーの費用、対症療法に必要な薬、リテーナーをつけた後の2ヵ月後、3ヵ月後、半年後、1年後のフォローアップ検診も含まれています。つまり決められた金額にはすべて含まれ、後から別個請求されるものはいっさいありませんでした。

費用の比較は合計額のみでは判断できないと思います。日本では検診のたびにきめ細かなサービスが行われていました。それに対してアメリカは実に短時間でサービスの細かさはありませんでした。さらに上の子は5年かかったのに対して、下の子はその半分でした。そして上の子はヘッドギアを使用するあごの調整もありましたが、下の子はそれがありませんでした。またリテーナーの種類も二人とも異なったものを使用しました。


2年半つけていた装置をはずし、初めて自信をもってスマイル。
P先生と一緒に

結論

このように同じ歯列矯正治療といってもケースバイケースですので本当のところでの比較はむずかしいと感じました。しかしアメリカでの治療のほうがはるかに合理的で、納得のいく治療で、子どもの気持ちを配慮しながら進んだと思います。日本での治療は、とても丁寧で、きちんとマニュアル通りに進められ、頻繁に検査を行い、その治療具合をこと細かに記録し、サービスの質は高かったと評価します。ただし、それほどまでする必要が果たしてあっただろうか、医者側の治療の進め方の押し付けであまり患者側の都合、苦労、心への影響など耳を傾けてくれなかったのではないだろうか、また選択の余地のない過剰サービスに費やした金額、クリニック側の研究に協力したデータ収集などは納得いかなかったといえます。これは日本全体のサービス産業の姿勢および日本人の正確さ、完璧さを追う気質が矯正治療にも反映されていたのではないでしょうか。いずれにしろプロセスが多少違っても、子どもたちのきれいな歯並びを見るたびに、これでやっとひとつ親の責任を果たしたと感じました。

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(編集部より)

 筆者ノーラ・コーリさんは独自のホームページ(http://www.caretheworld.com/)を開設して、海外出産・育児・医療ほか幅広い関連情報を発信されています。JOMFホームページからもリンクしています。本ニュースレターNo.129ではパナマでの出産事情に関するレポートを掲載しております。