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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL11070101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、医療事情 / / / / / / / / / / /

◆シンガポール

シンガポール日本人会クリニック
日暮 浩実

◇ポリオワクチン

ポリオワクチンはシンガポールでも定期予防接種に組み入れられています(1962年開始)。この予防接種の効果と思われますが、シンガポールでは1973年以来、ポリオの自然発生は認められていません。

接種回数は日本では、乳児期に2回ですが(これは世界的に見て例外的に少ない回数です)。ほとんどの国は3回以上で、シンガポールでは生後3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、18ヶ月、6-7歳、10-11歳の合計6回となっています。経口生ワクチン(OPV)が使われ、国民は公費で接種することが出来ます。

しかしながら、シンガポールでは、不活化ワクチン(IPV)も公式に認可されています。これは、公費では打てませんが、自己負担をすれば打つことが出来ます。

IPVはOPVに比べ費用がかかります。シンガポール国民は公費負担ですので単純比較は出来ませんが、外国人は自費ですので、費用を比較してみますと、当地では、IPVはOPVの4倍程度となっています。

OPVはIPVに比べ費用がかかるわけですが、多くの国(特に先進国)では、OPVからIPVに変更されています。これは、先進国では自然発生のポリオがほとんどなくなったため、OPVによる麻痺(ワクチン関連性麻痺Vaccine associated paralytic poliomyelitis ,VAPP)の発生が、無視できなくなってきたことが主な理由とされています。日本の報告では1981~2006年間に、免疫異常のない被接種者に麻痺が発生した頻度は約486万接種あたり1例とされています。アメリカでは1990~1999年の解析結果では免疫不全例も含めた解析で290万接種に1例との結果が出ています。

このため、アメリカでは、1997~99年の移行期を経て、2000年から全てIPVに変更しました。その結果、IPVのみの接種やPV2回接種後にOPVを受けた例からは、VAPPは一例も出ていないとのことです。

シンガポールでもVAPPがあるはずですが、公のデータは見つかりませんでした。年間の出生数が3.7万人強と少ないため、副作用例も少ないのかもしれません。

2008年4月、南アジア、アフリカなどで流行が見られたときには、成人でも過去に3回以上、ポリオの予防接種をしていない人はcatch up の予防接種を推奨するという知らせがシンガポール保健省から国民に向けて公布されました。また、過去に一度も接種したことがない方は1回目と2回目は、IPVを打つようにアドバイスされました。これは、先のアメリカでの情報を踏まえてのことかと思われます。

最近、当院でもIPVを希望される方が増えて来ているように思います。当院でのIPVの接種は2008年からですが、今年は半年たらずで、既に昨年1年間の接種数を超えています。他の日系のクリニックにも多くのワクチン接種希望者が訪れていると思われますので、実際には、さらに多くの方々がIPVを選択されたものと思います。

テレビやインターネットなど多くのメディアの情報もあり、今後、こうした傾向は一層強まるのではないかと思います。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
菊地 宏久

◇ゴルフ肘Golfer’s Elbow, テニス肘Tennis Elbow

今回は当院を受診する患者さんで比較的多いゴルフ肘、テニス肘について書きます。駐在員や同伴家族の方々も日本に住んでいた時より気軽にプレーできる機会が多く、その分症状発現も多くなっている印象です。多くの患者さんは痛みを我慢してゲームを続け、結果としてなかなか治らない状態になってから受診しています。
 
医学書には上腕骨上顆炎Epicondylitis of humerusと書かれていますが、一般の人向けに英語でGolfer’s Elbow, Tennis Elbowと書かれている本もあります。テニス肘は肘の外側が痛くなることが多く文字通りテニスをする人や反復性の手関節伸展作業をしている人に多いといわれています。ゴルフ肘はゴルフや野球(特にピッチャー)、大工仕事、配管工事などの職業に多く、肘の内側が痛くなることが多いといわれています。活動による肘のoveruseで症状が発生し、多くの場合は徐々に気づかぬ間に悪化し強い疼痛となって出現します。重症になると飲み物カップが持てなくなったり、強く握れなくなることもあります。30才~50才代に多く40才代にピークがあります。急性の発症は若い運動選手に多く、慢性の頑固な症状は高齢者に起こりやすいといわれています。

診断においては整形外科疾患以外にも感染症や痛風の可能性も考えなければなりません。またしびれや安静時の痛みを伴うときは頸髄疾患も考えます。

治療は原因となる作業を直ちに中止することから始めます。ゴルフ肘は一旦痛みを感じるとその後我慢してプレーしても必ず悪化します。最悪の場合はゴルフができなくなってしまうことさえあります。完全な固定を行う必要はありませんが1カ月程度の局所の安静と疼痛を増強させる動作を避けることが大切です。アイシング、軟膏やシップの塗布も有効です。テーピングやサポーターで固定し、不快でなければマッサージやストレッチで筋肉をほぐします。痛みが強ければ消炎鎮痛剤の内服も有効です。肘の痛みが完治するまでの間に周辺筋肉の強化、スイングの改善などを行うことも良いでしょう。テニス肘についても同様です。

しかし不適切な治療により症状が悪化したり回復が遅れて半年以上に及ぶ場合もあります。疼痛が改善したあとは必要があればフォームの改善や道具の変更も考えましょう。テニスラケットではフレームの質、ガットの張力があまり強くないもの、単位面積あたりのストリング数の多いラケットへの変更などを考えることも大切だと言われています。またゴルフクラブでは適切な重量、長さ、適切なグリップのものを使用することが大切だと言われています。そうすることで肘関節内の損傷が起こりにくくなります。さらに患肢の肘保護とともに体全体を調整することが回復には重要です。ゲームの前の準備体操、柔軟性、筋力、持久を含むバランスのとれた系統的なインターバルプログラムでの調整が大切です。

お大事にしてください。

参考文献:
1)Minor Emergencies , Philip Buttaravoli, MOSBY,2007
2)今日の整形外科治療指針、2010年、医学書院



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
原 稔  

◇心筋梗塞

 
日本人の3大死因のひとつが心疾患です。その多くは心筋梗塞によります。心臓の表面を走行し、心臓自身に栄養を補給している血管を冠状動脈と呼びますが、この冠状動脈が動脈硬化などの原因で閉塞して、その下流にある範囲の心臓の筋肉が壊死してしまうのが心筋梗塞です。
心筋梗塞を起こすと、致死性の不整脈が出る危険性が極度に高まります。急性心筋梗塞で死に至る場合の多くは、この不整脈(心室細動)が原因です。正常時は一定のリズムで拍動を続けている心臓が、痙攣したような状態に陥り、ポンプ機能が破綻します。この時、最初にダメージを受けるのは脳です。脳細胞は数分間血流(酸素の供給)が途絶えると元に戻らなくなります。
ここで大切なのが、市民による一次救命処置です。2か月前にもこの場で触れました。脳細胞が不可逆的なダメージを受ける前に心臓マッサージを施し、脳への血流を保つ処置です。AEDがあれば、心室細動を起こした心臓に電気ショックを与え、正常のリズムに戻してあげることです。
 
ゴルフ場で、胸を痛がって倒れた人が痙攣して意識を失ったならば、上記の、心筋梗塞に続く心室細動と考えられます。躊躇せず心臓マッサージを始めてください。
泡を吹いて倒れている中年のおじさんに、口対口で人工呼吸をするのは抵抗があると思います。心臓マッサージだけでも構いません。すぐさま始めることです。
続いて、一刻も早く病院に搬送する必要があります。心室細動の有無に関わらず、心筋梗塞は時間との勝負です。6時間以内に閉塞した冠状動脈を再開通させてあげることが大事です。それには専門病院でのカテーテル治療が必要となります。
急性心筋梗塞の治療はジャカルタで受けるべきです。時間的な制約はもちろん、シンガポールや日本への搬送は、それ自体が大きなリスクになります。
Harapan Kita病院などでは、高いレベルの治療が可能です。当然、緊急にも対応しています。
 
交通渋滞は大きな問題ですが此処に住む以上避けては通れません。その条件下で最善を尽くすのみです。このような事態にならないことを願いたいのですが、現実はそうではありません。状況に応じた対応が必要です。
 
「焦らず急げ。」研修医のころ上司に言われた言葉です。



(以上)