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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL11110101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、医療事情 / / / / / / / / / / /


◆シンガポール

シンガポール日本人会クリニック
日暮 浩実

◇メリオイドーシス

10月26日の情報交換会での御清聴ありがとうございました。

その際に上記疾患について、症例と一般的な報告をさせていただきましたが、今回は、シンガポールでの状況に関しまして補足をかねて報告をさせていただきます。

これは、Burkholderia pseudomallei という菌が原因の感染症です。東南アジア、なかでもマレーシア、タイ、北オーストラリアなどに広く分布しています。シンガポールでは1998年から2007年までの10年間に693例が報告されています。男性が女性より2.8-7.2倍多くなっています。これらの報告例のうち肺炎を起こしたものが半数以上あり、特に雨季には肺炎の確率が高まります。この菌は通常、土壌の中に存在しているため、足などの傷から感染しやすいのですが、雨季には多量の水によって土壌表面に出てきやすくなり、水滴などとともに呼吸器から感染する機会が増えるとされています。

シンガポールでの死亡率は年や時期にによって異なり30-50%となることもありますが、この10年間の平均では16%でした。糖尿病や免疫抑制剤を服用している方など、免疫力が低下している方は重症化することが多いとされています。この10年間の報告では患者様のうち、糖尿病を持っていた方は48%、高血圧26%、腎障害13%、虚血性心疾患12%などとなっていました。こうした何らかの疾患がある場合の死亡率は19%であり、疾患のない方では6.5%と大きな差がありました。

マレーシアなど地域によっては、人口の15-30%が抗体を持って(感染したことがある)います。局所的な重症でない症状を示すことも多い中で、上記のように死に至ることも多々あり、患者さんの免疫力が予後の大きな因子となるようです。

また、一旦かかると、再発率も高く、5年で15%くらいが再発するとも言われています。Once melioidosis, always melioidosisなどといわれることもあります。

大変怖い病気に違いはないのですが、1989-1996年の調査時の死亡率が約40%であったことを考えるとかなり低下してきています。これは、この病気に対する知識が増え、早期に発見され治療が開始される例が増えてきたことによるとされています。

土壌に存在していることから、一般に農業従事者や土木作業者など、土壌と接触のある方がなりやすいとされています。また、レクリエーション、例えば、ゴルフ中に汚染された水と接触することによって感染した例も報告されています。

マレーシアなどで土壌を検査するとかなり高い確率で、この菌が認められるのですが、シンガポールでは1.8%と大変低い確率でしかありません。また、水からの菌の検出はありませんでした。そのためか、シンガポールにおいては患者さんの職業との病気との間に明らかな関係は認められません。

治療としては抗生剤ceftazidime、doxycycline、 imipenemその他いくつか効力のあるものがあります。治療期間は一カ月から数カ月に及ぶこともあります。

水溜りや泥などに不用意に接触しないなどの注意が必要であるとともに、普段からの体力保持が大切です。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
菊地 宏久

◇インフルエンザとマニラでのタミフル処方について
 
北半球の温帯地域では冬を迎え、インフルエンザの流行が懸念される時期になってきました。日本では年間に数百万人~一千万人以上が罹患し、毎年1万人以上がインフルエンザで死亡しています。この死亡者数は日本における交通事故死亡者数の2倍以上に匹敵します。たかがインフルエンザ、とは言えない状況です。少しでも予防になればと思い、今回はインフルエンザとマニラでのタミフル処方状況についてお話します。
 
インフルエンザの多くは接触感染と飛沫感染の二つの方法で感染が拡大していきます。他患者からの痰や鼻水を手で触れそれを自分の鼻や口に触れたり、咳やくしゃみから飛んでくるウイルスの入った飛沫を吸うことにより感染します。ウイルスが鼻、口、目から気道内に侵入し典型例では1‐2日の潜伏期間の後に高熱、関節痛、筋肉痛などの全身症状が発症します。発熱前後に呼吸器症状や吐気、下痢などがおこる方もいます。一般の風邪より重症感が強く、高熱は5日前後続き、回復までに1週間から10日かかります。また日本でも話題になっているように一部の患者さんでは重症になり肺炎や脳炎を合併します。これら合併症が更に重篤化すると死に至る場合もあり得ます。当院では幸い重症に至った患者さんは出ていませんが、肺炎を合併してから受診する小児の患者さんが今年は多く見られます。したがってお子様の感染には特に注意が必要です。

診断方法にはウイルス分離法、血清抗体価測定法、EIA法によるインフルエンザ迅速診断キットなどがありますが、当院では日本の一般病院と同じくEIA法による迅速診断キットを用いています。さらに二次感染症として肺炎が疑われる場合には胸部レントゲン検査や血液検査も行います。適切な治療方針や薬剤を決めるためにこれらの検査を併用します。
 
マニラで入手可能な抗インフルエンザ薬は現時点ではoseltamivir(タミフル)のみです。成人用薬の調達も簡単ではありませんが”小児用“として調剤してくれる薬局は極めて少数に限られています。時期によっても処方箋受付可能な薬局が異なっていますので適宜情報収集が大切です。
 
インフルエンザは予防が第一です。ワクチン接種、手洗いなどが大切です。また患者さんはマスクをするなど「咳エチケット」にもご協力ください。
マニラは暖かいのですが、これから日本はインフルエンザの流行する冬に突入します。
みなさんどうぞお身体を大切にしてください。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
原 稔  

◇昭和基地の医療
 
先日、懐かしい顔が突然相談室に現れて驚きました。以前、南極昭和基地で共に過ごしたH氏です。最近、ジャカルタに赴任したとのこと。基地から遠く離れた野外行動中に、雪上車の中で彼の手を縫ったのを思い出します。傷口には焼酎をぶっかけて、畳針とタコ糸で・・・なんてことはなく、きちんと局所麻酔をして処置しました。
 
今回は南極の医療を紹介します。
 
越冬隊員は総勢三十数名です。各部門の研究者からなる観測隊員が半分。残りの半分がそれをサポートする設営隊員です。医療部門は設営に属し、2名の医者が越冬しています。人口当たりの医者の比率は極端に高いですね。以前は1名でしたが、ソ連の基地で医者が虫垂炎になり自分で自分の手術をするという事があり、日本の隊は医者が2名になったそうです。(ソ連の基地の話はLonely Planet Antarcticaにも掲載されています。)

基地には立派な医務室があります。手術室とレントゲン室も併設されており、日本の一般的な診療所以上の設備が揃っています。歯科診療台もあります。歯科医は越冬していないので、医者が歯の治療も行います。恐ろしいことです。

疾患としては、肉体労働による腰痛、関節痛、外傷が目立ちます。環境に起因する、凍傷、雪目なども当然ありますが、数はそう多くありません。皆、予防に努めています。また、意外に思われるでしょうが、風邪はひきません。越冬中は外部との接触が無く、風邪の原因ウィルスが持ち込まれないからです。

医療機器のメンテナンスは医療隊員の仕事です。2回目の越冬では、レントゲン装置の入れ替えも行いました。簡易的なものでは無く、胃透視検査もできる固定式の装置です。日本を発つ前には、機械担当の隊員らと伴に製造元の工場で訓練を受けました。その際、組み立てた装置から煙が出るアクシデントがありました。配線のプラスとマイナスを逆につないだのが原因でした。犯人は私です。

また、看護師も検査技師もレントゲン技師も薬剤師もいません。自分達ですべてやります。問診に始まり、血圧を測って診察し、採血も超音波検査もレントゲン撮影も薬の処方も点滴もケガの処置も、全て自分でこなします。やらないのは、治療費の請求です。

人手が足りない時は他部門から応援をもらいます。外科処置の時は、大工に看護師の仕事をお願いしました。逆も同様です。患者がいないときは、大工仕事もすれば、廃品の処理もやります。観測の手伝いもします。それぞれの部門が、互いに協力し合って基地を維持しています。
 
インドネシアでは基本的に、医師が採血したり、点滴の針を刺したりすることはありません。医療に限らず、生活全般にわたって仕事が分けられている印象です。
南極の生活との違いを楽しみながら、もうすぐ赴任後2年になります。あっという間ですね。


(以上)