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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り(2012.02)
NL12020101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、医療事情 / / / / / / / / / / /



◆シンガポール

シンガポール日本人会クリニック
日暮 浩実

◇小児の定期予防接種~スケジュール、内容の変更

シンガポールでは最近、いくつかのワクチンについて、接種時期や内容の変更がありました。今回はMMR(麻疹、風疹、おたふく)ワクチンとDPTワクチンについてお話します。

MMR(麻疹、風疹、おたふく)ワクチン
日本ではおたふく風邪を予防する成分が入っていないMRワクチンが使われていますが、世界的にはおたふく風邪を予防する成分が入ったMMR ワクチンが一般的です。
MMRワクチンは他の多くの国と同様に、シンガポールでも小児の定期予防接種に組み入れられていますが、近年、ワクチンの接種の時期が、2度変更されました。2007年までは1歳代に1回目を打ち、12歳で追加接種をするようになっていました。ワクチンの注意書きを見ますと、満12か月になれば打てると書かれていますが、シンガポールでは小児の免疫反応を考慮して生後15カ月になってから打つというのが一般的だったようです。その後、2007年に追加接種の時期が6-7歳に変更になりました。
更に2011年12月からは1回目の接種の時期が満12か月となり、追加接種は標準的にはその“3ヶ月から半年後”(満15ヶ月から18ヶ月)に変更になりました。理由は満15ヶ月以下のお子さんでの麻疹の罹患例が多かったからということです。確かに日本でも1歳の誕生日に打ちましょうということが喧伝されてもいます。
 
医療機関に正式な通達があったのは11月11日で、新たなスケジュールの実施は12月1からということでした。
 
スケジュールが変わったので、移行措置として、通常なら1回目を終えている年齢かつ未だ小学校入学前で、今までに一度も接種されたことがないお子さんは最低1ヶ月の間隔で2回打つことが薦められています。
また、既に1回打ったことがある小学校入学前のお子さんも2回目を打つことが薦められています。
ちなみにMMRにさらに水疱瘡を予防する成分の入ったMMRVというワクチンもあり、 これをMMRの代わりに打つことができます。ただ、これは接種後5-12日後に発熱や熱性けいれんを起こす確率がMMR を打ったときに比べて多いという発表がシンガポール保健省からでていますので、接種の際には医師と良く御相談ください。
 
DPTワクチン
百日咳はもともとお子さんの病気ということで知られていましたが、近年は大人の患者さんの割合が高まっています。日本では2010年には成人例が50%を越え、患者さんの年齢比率からすると、百日咳は既に大人の病気といえます。百日咳を予防するワクチンはDPTワクチンに含まれています。このワクチンは0歳代に3回打ち、1歳代に1回追加し、12歳で更に追加がありますが、この12歳の追加の際には、今までは百日咳抜きのDTワクチンが使われていました。大人の百日咳の増加はシンガポールでも同様の傾向が認められるため、このほど正式に12歳の追加接種の際にはこの百日咳を予防する成分が入ったワクチンが薦められることになりました。

シンガポールではワクチンのスケジュールや内容の変更が迅速です。国の規模が比較的大きくなく、先進国で情報伝達が早いため、こうした迅速な対応ができるのだろうと思います。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
菊地 宏久

◇デング熱患者の多くの病態はSIRS、そして敗血症です!
 
デング熱の重症化というといつもデング出血熱が話題になりますが、今回はデング熱とSIRSという観点から述べてみたいと思います。(今回述べるSIRSは2004年に世界中を不安に陥れたSARS《重症急性呼吸器症候群》とは無関係の病態です)
 
当院を受診されたデング熱患者数を年間を通してみると、マニラでは年間を通してデング熱が発症していると考えられます。患者さんの数は蚊の繁殖しやすい雨季に多い傾向が認められますが、2011年1月から2012年1月までの期間では4月を除きほかのすべての月でデング熱を発症した患者さんが受診しています。
デング熱で受診する患者さんの多くは“38度以上の発熱”を主訴に来院していますが、“発熱の無い全身倦怠感”や“微熱を伴う発疹”を主訴に来院した患者さんもいました。発熱がなくとも重症感があり、熱がないのにもかかわらず心拍数が100以上の頻脈であったり呼吸数が20/分以上の頻呼吸であった患者さんもいました。

当院を受診したデング熱患者さんのほとんどはSIRSという病態の診断基準を満たしていました。SIRSとはSystemic Inflammatory Response Syndrome(全身性炎症性反応症候群)の略で“重傷病態を表す症候群”として位置づけられています。SIRSは多臓器不全の早期サインともいわれ、さらに重篤化する可能性が高い病態とも考えられています。以下に診断基準を示します。

SIRSの診断基準(一般のみなさん用に簡略化しています):
1) 体温38℃以上もしくは低体温(36℃以下)
2) 心拍数90/分以上
3) 呼吸数20/分以上
4) 白血球数12000/μl以上もしくは4000/μl以下
これらの4項目のうち2項目以上を満たすときにSIRSと診断されます。

当院を受診した多くのデング熱患者さんは38℃以上の高熱、心拍数90回以上の頻脈、白血球4000以下に減少していましたので、SIRSの診断基準を満たします。これらの患者さんは「デング熱によってSIRSが引き起こされていた」と考えられます。
 
また重症病態の一つである“敗血症”という言葉を聞かれた方も多いと思います。敗血症とは「感染症によって引き起こされたSIRS」のことを言います。(感染症以外にもSIRSを引き起こす病態としては外傷、熱傷、膵炎、血管炎などの自己免疫性疾患、肺塞栓症などの血栓症もあります)
デング熱はウイルスによる感染症ですので、デング熱によってSIRSを引き起こされた患者さんは“敗血症”でもあります。敗血症は更に重症化したり遷延化したりすると全身の重要臓器障害を発症し生命を脅かす病態を高率に引き起こします。全身性の急性循環障害に陥り重要臓器への血流不全の病態―“ショック”―へも進行しやすくなります。ショックに進行した場合には緊急に治療を開始しないと生命にかかわる病態です。
 
デング熱に罹患しSIRSという病態に進行した患者さんは敗血症という病態になっています。このような患者さんに対しては注意深く病態経過を観察することを心がけています。

どうぞお大事にしてください。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
原 稔  

◇心房細動

心房細動という不整脈があります。通常、成人の心臓は安静時ならば1分間に60~70回程度、心房・心室の順で規則的に収縮して、全身に血液を供給しています。心房細動では、心房が正常な収縮を止めて痙攣したような状態になり、心室は不規則なタイミングで収縮します。脈をとるとばらばらのタイミングで拍動が感じられます。この時、心臓全体のポンプとしての機能は、心室の収縮によって大方保たれます。人によって、動悸など何らかの症状が出る人もあれば、無症状の人もいます。

心房細動は即座に命に危険が及ぶようなものではありません。大きな問題は、脳梗塞の危険性が高くなることです。心房の規則的な収縮が無くなるので、左心房内で血液が澱み、固まり易くなります。この時できる血の塊を血栓と呼びますが、これが血流に乗って流れて行き、頭の血管が詰まってしまうと脳梗塞を起こします。その範囲と場所によっては命に関わり、そうでなくとも障害が残ります。

よって、心房細動では脳梗塞を予防することが重要です。「ワーファリン」という、血液を固まりにくくする薬がよく使われます。薬の量を調節するために定期的な、時に頻回の血液検査が必要ですが、予防効果は証明されています。また、納豆などのビタミンKを多く含む食品は、ワーファリンの作用を阻害してしまうため、制限されます。しかし、これは外傷や手術等の際(血が止まらないと困ります)には、ビタミンKを中和薬として用いることができるということにもなります。(納豆を用いることはありません。)ジャカルタの場合、デング出血熱のことを考えると、ワーファリンが中和できることは安心感につながります。

日本では、「タビガトラン」という薬が使用されるようになりました。ワーファリンのように血液検査は必要なく、脳梗塞予防効果は優れているとのことです。インドネシアでも発売されています。こちらはワーファリンのように中和する薬はありませんが、作用の持続時間が比較的短いという特徴があります。

70歳以上では10人に1人くらいがこの不整脈を持っていると言われています。他の心臓病に合併している場合もあれば、単独の心房細動の場合もあります。症状が無い場合、放置しがちですが、先に書きましたとおり、脳梗塞の危険性が高まります。海外でもきちんとフォローされることをお勧めします。
 
似た名前のものに、「心室細動」がありますが、こちらはすぐに対応しないと死に直結する、危険な不整脈です。混同されないようにご注意ください。




(以上)