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海外生活とSTD対策

インドネシアの性感染症状況

JJC医療相談室 横内 敬二

インドネシアの性感染症の現況(特にHIVについて)

 インドネシアは西のアチェ州から東のパプア州まで東西5,100km、赤道を挟んで南北1,900㎞、1,300以上の島々から成り、人口は世界第四位の約2億人、250以上の民族からなる多民族国家です。首都ジャカルタはスマトラ島とバリ島の間にあるジャワ島の西側に位置し、人口は約1,000万人の大都会です。このような地理的な広範さ、最近の長引く経済低迷から保健衛生行政は極めて遅れています。
 感染症の死亡原因の第一位は結核で、公衆衛生状態は日本の30~40年前の水準にあり、一般的な医療レベルもほぼその年代と同じ位と考えられます。結核に対しても財政難から対策は十分講じられておらず、罹患率は日本の約8倍と推定されています。
 性感染症については、世界保健機関と国連エイズ計画の助言、指導の下でようやく国の保健省がサーベイランスを始めたところです。インドネシアでは、HIV感染はまだ少ない状態ですが、人口が多いため早急に対策をとらないと、今後指数関数的な大流行が懸念されています。その理由として、感染リスクの高い性交渉の増加、性感染症の流行、貧困、移住者の増加、都市化、麻薬注射使用者の急増、HIV流行地域に近接しているなどが挙げられます。
 国民の9割はイスラム教徒であり、インドネシアは世界最大のイスラム人口を抱え、しばしば国際上論議をかもしていますが、大多数は穏健で敬虔なイスラム信者です。イスラム教では、性は公共上厳しく抑圧されていて、市中にはポルノ雑誌や性描写の露骨な書物、ビデオ、映画、広告など性的刺激となるものは一切見かけません。テレビでも女性の肌の露出度が高い番組にはイスラム団体よりすぐにクレームがつきます。
 宗教上、婚前交渉や婚姻以外の性交渉は禁止され、性の規範を厳格に守ることが重要視され、売春行為は禁忌でむろん法律上も違法です。しかし、実際にはジャカルタなどの大都市やリゾート地、パプア州などの港町には歓楽街があり風俗営業は行われています。性欲そのものは否定されている訳ではなく、夫婦間の性的快楽を求めることは肯定され、結婚は積極的に奨励されています。最近は性の解放も徐々に行われていますが、同性愛については依然として全く認められていません。
 食欲に関しても規制は厳しく、アルコール、豚肉等の摂取は禁じられていますが、庶民はその教えに忠実に従っており、今後の動向として急に性行動だけが活発になるとは考えられません。
 インドネシアの性感染症の実情について詳細は不明ですが、保健省の統計白書によると、2001年9月までにHIV感染者は1,678人、エイズ患者は635人となっています。公式発表では、HIV感染率はまだ他の東南アジアに比べて非常に低い状態ですが、実際の感染者は8万~12万人と推測されています。

 インドネシアの特定の地域ではHIV感染率が年々急増し深刻な問題になっています。マレー半島と接するスマトラ島のリアウ州(バタン島、ビンタン島など)、遠洋漁業の中継拠点がある東端のパプア州、大都会であるジャカルタ州、スラバヤなどの大都市がある東ジャワ州などは蔓延が問題となっています。リアウ州の港タンジュンバトゥの女性性従事者の感染率は8%、バタム島の同性愛者は6%、パプア州の港町メラウケの売春婦は26.5%の高率を示しています。
 ジャカルタなどの都市では麻薬注射による感染が広がっており、今最も重大な問題となっています。例えば、ジャカルタの麻薬中毒患者の病院では、この3年間にHIV感染者は14%から40%へ激増しています。一般に麻薬注射使用者の感染率は、ジャカルタで44%、バリ島では53%といわれています。
 インドネシア赤十字の調査によると、献血におけるHIV感染は1万人に対して、98年は0.15、2000年には十倍の1.5になっています。その主な原因はやはり注射針の使い回しのためと考えられています。赤十字は血液検査を十分行っているので、輸血には全く問題はないとしています。
 報告されたエイズ635人については詳細な検討がなされています。州では、ジャカルタ239人(38%)、パプア州210人(33%)、東ジャワ州63人、西ジャワ州38人、バリ州27人、リアウ州15人の順に多く、性別では、大多数が男性で502人(79%)、女性133人(21%)となっています。
 感染経路は、性感染(異性間、同性間)が最も多く443人(70%)、次に麻薬注射で119人(19%)、輸血3人、先天性3人、不明60人(9%)などとなっていますが、最近麻薬注射による割合が高くなっています。年齢では、20代240人(38%)、30代219人(34%)が大部分を占め、このことはハイティーンから20代前半にHIVに感染したことを示し、麻薬使用者の若年者にエイズが増加している結果と考えられます。
 職業別ではあらゆる分野にわたっており、多い順に、ビジネスマン、学生、労働者、農業漁業従事者、船員、主婦、性産業従事者などとなっています。
 性感染症に関しての報告システムはまだ不十分ですが、4都市(ジャカルタ、スラバヤ、クパン、マナド)での調査によると、淋病20~30%、クラミジア22~40%という結果が報告されています。
 コンドームの使用についての調査によると、3都市(ジャカルタ、スラバヤ、マナド)では、HIV感染に予防効果があることを理解している性産業従事者は70~84%ですが、実際使用している人は10~12%であり、また一方客側では知識を持っている人は53~82%、常時使用している割合は4~11%とのことです。また既婚者の方が単身者より性産業を利用する割合が高いという結果が出ています。既婚者のコンドームの使用率は5年前に比べ高くなっていますが、まだ4人の中3人がコンドームを使用していないことから、今後妻へそして子供へと感染が一般家庭に広がっていく危険が高く、政府の早急な性感染対策が望まれます。

性感染症の現況(ジャカルタジャパンクラブ医療相談室)

 2001年12月から2002年11月までの一年間に、医療相談室の性感染症は37人で、以前と比べてむしろ減少傾向にあります。しかし、相談室の総受診者数の減少、他の医療機関への受診が増加したためとも考えられ、一概に楽観はできず、邦人における性感染症の実態についてははっきりわかりません。
 性感染症は性行為または性交に類似した行為により接触感染する疾患の総称で、主な病原体としては、HIV、梅毒、淋菌、軟性下疳菌、クラミジア、ヘルペスウイルス、肝炎ウイルスなどが挙げられます。
 医療相談室における疾患としては、尿道炎が大部分で、他には性器ヘルペス、ケジラミ症、軟性下疳が各1人ずつありました。以前は梅毒、B型肝炎、尖圭コンジローマなどが報告されていますが、この期間にはこれらの発生はありません。
 受診者はたいてい、「恥ずかしい話ですが、また性病に罹ってしまったようです」といって来院します。性感染症についての知識、感染のリスクの高さは十分に認識しているが、つい注意を怠って感染してしまう場合が多いようです。カルテを見ると過去に受診歴がある人がかなりいます。
 性感染症のほとんどは、女性の場合、症状が出現しませんので、たとえ感染していても来院する機会はなく、当相談室の性感染症は、すべて30代から50代の男性となっています。セックスパートナーは大部分が性産業従事者で、感染はすべて女性従事者からであり、男性同士間の感染はありませんでした。
 治療は身に覚えがあり、症状がはっきりある人に対しては、「疑わしきは罰する」方針で実施しています。例えば、尿道炎は淋菌性と非淋菌性に分けられますが、正確な診断をする前に治療を開始しています。非淋菌性の大部分を占めるクラミジアの抗体検査が技術的に困難なこともあり、混合感染の可能性を考えて、淋菌、クラミジア両者に対して投薬しています。淋病についてはセフェム系の抗生物質、クラミジアに対してはマクロライド系のアジスロマイシンを投与しています。
 治療にはパートナーの治療も重要で、当地で特定の人が存在する場合は併せてその人の分も処方しています。性感染症に罹患した人に対して、HIV、B型肝炎、梅毒等の血液検査を勧めていますが、検査の受診率は大変低い状態です。検査料が高いこと、他人に知られたくない病気であること、旅行傷害保険などを利用しにくいということが原因と思われますが、性感染症対策の難しさを実感します。当相談室開設以来、今までのところ、HIV感染の報告はありません。
 予防は現在、B型肝炎以外ワクチンは開発されていないため、コンドームを正しく使用して、皮膚や粘膜との物理的接触を避けるしか方法はありません。
 インドネシアのコンドームの使用率は他国と比べまだ低いといわれています。ある財団の調査によると、人口8,000万のタイでは、コンドームの年間販売数は1億2,000個、人口2億のインドネシアは約半分の6,500個に過ぎないとのことです。避妊についての認識は高まっていますが、性感染症予防の面ではまだ十分教育が浸透していません。コンドームを使用しない男性の多くは、その理由として、「快感が得られない」、「エイズに罹るはずがない」と考えているそうです。
 インドネシアにおいては、まだ一般家庭の中に日常的に性感染症が蔓延している状態ではありませんので、ハイリスクの相手との性交渉時に、コンドームを使用さえすれば個人レベルで完全に予防が可能と考えられます。
 コンドームは一般の薬局や大型スーパーの医薬品売場にて一個30円位で入手できますが、品質に関しては確かな情報はありません。日本製、欧米製のものも大きな薬局では購入できます。しかし、日本と違って薬局やスーパーへの交通アクセスは非常に悪く、必要な時にその場で手に入れることは困難です。いざという時に備えて、常日頃、「常備薬」として持ち歩くことが必要です。


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